2011年7月30日土曜日

「夏モード」についての連続ツイート

なつ!(1)子どもの頃、いや、それから随分経っても、9月になって、ちょっと涼しくなり、日も弱まってきた頃に「はっ」と気付くことがよくあった。それまでの自分が「夏モード」になっていたことを自覚し、これではいかん、もっときちんとしよう、とぎゅっと心を引き締めるのである。

なつ!(2)肝心なのは、一度、「夏モード」になって、心身ともに開放されることで、それを十分に楽しんでいなければ、秋からの努力にエネルギーが向かわない。夏を心の底から楽しんでこそ、「はっ」と気付いて、自分を引き締める喜びにも目覚めることができるのである。

なつ!(3)夏モード。それは、氷を浮かべたそうめん。子どもの頃食べた冷や麦には、白い中で色が違うのが入っていて、それを妹と取り合いした。緑や赤や黄色。ただ色が違うだけのその麺が、欲しくて、切なくて、この世のどんなものよりも輝かしく、そして大切なものに思えた。

なつ!(4)夏モード。それは、縁側で食べるスイカ。中が黄色いやつだとか、種なしだとか、いろいろあったな。種をとばしっこする。どこまで飛ぶか。時々間違って飲み込んでしまう。食べたスイカをカブトムシにあげる。あるいは母親が漬けものにして、翌日の食卓に並んだ。

なつ!(5)夏モード。それは、盆踊りで見る女の子の浴衣。いつもは学校で男の子たちとドッヂボールなんかして騒いでいるのに、浴衣になると妙に女っぽくなったりして、俺たち男はそんなことに気付かないふりをして、公園の暗がりであいかわらずわあわあ騒いでいたっけ。

なつ!(6)夏モード。それは、朝早く起きていくラジオ体操。スタンプを集めても、最後にもらえるのはどうせお菓子やノートなのに、押してもらうために町内会のおじさんの前に一生懸命並んだ。ラジオ体操第二で、誰かが必ず「うんこちんちん」と言って、男の子たちは笑い崩れた。

なつ!(7)夏モード。大人になって、京都で鱧の落としを初めて食べた。氷の上に白い身がきれいに並んでいる。梅肉で口にするその感覚が、何かに似ていると考えていて思いだした。子どもの頃、清流に裸足で入り、夢中になってタナゴを追いかけた、あの時間。古郷の清流は、今はどぶ川。

なつ!(7)夏モード。大人になって、京都で鱧の落としを初めて食べた。氷の上に白い身がきれいに並んでいる。梅肉で口にするその感覚が、何かに似ていると考えていて思いだした。子どもの頃、清流に裸足で入り、夢中になってタナゴを追いかけた、あの時間。古郷の清流は、今はどぶ川。

なつ!(9)夏は、少しくらいぼんやりして、だらけて、ごろごろして、けだるさに身をゆだね、青空を見つめ、砂浜にまみれ、夜風の中をさまよい、夕立に驚き、入道雲を見上げた方がいい。そして、秋風が吹いたら、はっと我に帰って、それからいろいろ引き締めればいいやね。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。