2012年6月13日水曜日

お金で、買えないものはありますか

おか(1)日本を改革することをべったおりで諦めたわけじゃなくて、徐々にやって行きたいと思う。一つの方法は同志を増やすことである。少しずつ、しかも できるだけ若い時(高校生くらい?)から現代のグローバルな文化に触れさせる。その一つの方法として、book clubはあると思った。

おか(2)そこで、Michael SandelのWhat money can't buyである。ツイートで興味を持ったら、是非、できれば原書で読んで欲しい。サンデル教授の、緻密なロジックを積み上げていく思考、その世界観が、日本 という文脈を超えた現代文明の息吹を運んでくるはず。

おか(3)サンデル氏がいきなり挙げる例が面白くて、アメリカのある州では、お金を払った囚人は、独房の「アップグレード」が出来て、他の囚人よりもきれ いで快適な部屋で過ごすことができるという。確か一泊85ドルとか書いてあったかな。ホリエモンだったら、そうするだろう。

おか(4)What money can't buyが挙げるアメリカの例は、なかなかに刺激的である。ある州では、決まった額を払うことで、一定の範囲内で「スピード違反」をする権利を与えることが 検討された。スピードガンで違反がわかっても、支払いをしている人は、警官が見逃すのだ。

おか(5)実際に行われている制度では、高速の優先レーンを走行する権利を、お金で買う。朝の渋滞時に、支払いをした優先レーン走行者と、一般レーン走行車では、平均速度が全く変わってしまう。そのような「市場メカニズム」の是非について、サンデル教授は検討を続ける。

おか(6)認知科学的に最も興味深いのは、あるお金が「罰金」なのか、それとも「利用料」なのかという視点だろう。ある託児所が、子どもを迎えに来るのに 遅刻した親に罰金を課したところ、むしろ遅刻が増えた。親は、罰金を、託児延長の「利用料」と考えるようになってしまったのである。

おか(7)スピード違反の罰金を、道路を高速で利用する「利用料」と考える運転者を排除するため、北欧のある国では収入に応じた「罰金」を課すことによって、懲罰的な意味合いを維持しているという。お金だけでは解決しない人間心理の問題である。

おか(8)サンデル教授は問う。友情はお金で買えるか。「利用料」で得た友情は、本当の友情とは言えないだろう。ノーベル賞委員会が、毎年一個の賞をオー クションしたらどうか。購入したノーベル賞は、もはや意味が違うだろう。マーケット原理では説明できない事象に、人間の本質が現れる。

おか(9)What money can't buyのような本を読むことの喜びは、サンデル教授のすぐれた考察に触れることと同時に、カテゴリーとして日本の文脈の中では存在しない思考のパターンを 知ること。だからこそ、できれば英語で読んだ方がいい。相対化することで、より日本が見えてくる。