2012年2月4日土曜日

ものづくり2.0のために必要なこと

もひ(1)数年前だったか、WEDGE(http://wedge.ismedia.jp/category/wedge)を読んでいると、よく日本の家電メーカーのことが書かれていた。なんでこんなに取り上げられるんだろうと思ったが、経済の中でのプレゼンスも高いし、一般の関心強かったのだろう。

もひ(2)それが、最近あまり家電メーカーの記事を見なくなった。いろいろ不調が続いているし、時代の流れが変わってしまったのだろう。そして、大手家電メーカーの三月期の赤字が報道された。円高の影響もあるとは言え、日本のものづくりの危機が今、ここにあることは誰もが認識する。

もひ(3)なぜ、日本の家電メーカーは不調になったのか。情報ネットワークと結びついた「ものづくり2.0」に適応できていないからである。そして、問題はソニーやシャープ、パナソニックだけにあるのではない。日本の社会全体として、「ものづくり2.0」に適応できる体制になっていない。

もひ(4)アップルのiPhoneやiPadのハードそのものはアメリカで作っているわけではない。それを、iOSや、ネットワークサービス、アプリのストア、iTunesでのコンテンツ販売といった情報ネットワークと結びつけたソリューションを設計している点に、最大の付加価値がある。

もひ(5)日本のメーカーは、ものづくり自体においては依然として優秀である。実際、スマートフォンに使われる撮像素子などでは、日本メーカーの存在感が大きく、利益も上がっている。圧倒的に苦手なのは、情報ネットワークと結びついた付加価値の生み出し方。これは、国難である。

もひ(6)インターネットという新しい文明の波の本質は、「偶有性」。規則性とランダム性が入り交じった新しいものづくりがなければならない。ところが、日本人は特定の文脈に適応するのは優秀でも、何が起こるかわからないインターネットの世界でプラットフォームをつくるのが、徹頭徹尾苦手。

もひ(7)偶有性が苦手な日本人のメンタリティは、至るところに表れている。たとえば大学入試。未だに、ペーパーテストで点数の高い方からとるのが公正で有効だと思っている。あるいは新卒一括採用。非典型的な人材、キャリアを評価できない。なぜならそれは偶有性のかたまりだから。

もひ(8)ものづくり2.0への道筋は、実は論理的には明確である。ペーパーテスト偏重の大学入試を変えること。たとえば、スーパーハッカーは率先して東大に入れてしまう。就活の根本的改革。新卒一括採用では、iPhoneを生み出す人材は生まれない。日本人のマインドセットを変えねばならぬ。

もひ(9)日本が不調になり、国難を迎えていることには、インターネット、グローバル化の下での偶有性への不適応という、明確な理由がある。とるべき対応策も、実は明確である。そのことは新潮45連載「日本八策」でも議論する予定だが、みなさんも一人ひとり、考えて見ませんか。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。