2011年8月11日木曜日

「ぐん!」と伸びる成長曲線の生理についての連続ツイート

ぐん!(1)小学校5年生の夏の初めに、水泳の記録会があった。ぼくの記録は平凡だったけれども、小林忠盛先生は、なぜか学校選抜に誘ってくれた。その頃のぼくのモットーは「根性」。苦手な種目にぶつかっていく、その猪のようなガッツをくんでくださったのだろう。

ぐん!(2)夏休み。水泳の練習は、午前と午後、毎日続いた。クロールの足の使い方が、どうしてもダメなようだった。「もっとやわらかくのばして!」と小林先生。「水をつかめ!」ところが、その水が、なかなかつかめない。理屈やイメージでわかっても、身体がうごかない。

ぐん!(3)午前の練習を終えたお昼休みはばてて、みんなで体育館の床にごろごろした。誰かがふざけて振ったファンタの缶がいきおいよくぷしゅっと吹き出して、床の上でくるくる回った。午後の練習の時まで、ひたすら寝転がって、体力の回復につとめた。

ぐん!(4)やがて、毎日の練習で疲れがたまって、手足の協調どころではなくなってきた。記録の方も、むしろ遅くなってきた。そんなぼくの様子を見て、小林先生は「だいじょうぶ!」と言った。「疲れてきているな。でも、だいじょうぶ。そのうち、絶対にぐん! と伸びるから。」

ぐん!(5)「練習をしていると、疲労がたまってきて記録が落ちることがある。そこを我慢して続けていると、そのうち、すっと抜けたようにぐん! と記録が伸びる。今までの経験で、絶対にそうだから、あきらめずに続けろよ、茂木君!」と小林先生が言った、あの夏のプールサイド。

ぐん!(6)小林先生の言葉を信じて、練習を続けた。開始して二週間くらい経ったある日のこと。プールに入った時から、なぜか身体が違っていた。「あしをのばしてやわらかく」という感覚が、すっとつかめた。泳いでいて、身体が軽く感じた。小林先生が、「それだ!」と叫んだ。

ぐん!(7)記録を大幅更新。「フォームがぜんぜん違っていたぞ!」と小林先生がいった。疲労がたまって、もうダメだと思ったその先に、ぐん! と伸びるフェーズが待っていた。ぼくは、「このことだったのか!」と感動した。

ぐん!(8)ぐんぐん伸びる、というと、何の苦労もなしに成長するように思いがちである。しかし、実際には、苦しい時期がある。身体も頭もぐるぐるまわり、重く、進歩が感じられない。しかし、その暗闇の先にこそ、「ぐん!」と伸びて別世界をつかむ、真の悦びが待っているのだ。

ぐん!(9)勉強でも、仕事でも、スポーツでも、今までと違った感覚をつかむこと。それは、言葉にはできない。そのぐん! の飛躍の前には、長くて苦しい暗闇がある。真に凄いのは、そのような成長曲線が経験則として予想できるということ。人生、決して諦めずに続けていくのがよい。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。