2011年8月18日木曜日

「創造性の秘密は、起源を隠すことにある」ということについての連続ツイート

かく(1)宮沢和史さんの『島唄』は名曲である。「でいごの花が咲き 風を呼び 嵐がきた」「くりかえす悲しみは 島渡る波のよう」「ウージの森で歌った友よ ウージの下で八千代の別れ」。美しい言葉と音楽が、島渡る波のように私たちを包む。

かく(2)「ウージの森」とは、さとうきび畑のことであり、『島唄』は沖縄戦のことをうたった歌であること。そのことを知らなくても、「海よ 宇宙よ 神よ 命よ このまま永遠に夕凪を」という平和への祈りは届く。これが、名作の一つの共通事項。起源が隠されているのだ。

かく(3)子どもの頃、ドリフの「教室コント」を爆笑しながら見ていた。加藤茶や志村けんが、いかりや長介の先生にたてついて悪ふざけをする。このコント が、勉強ができずに黙っている子どもたちにとって大いなる「救い」になっていたことに気付いたのは、ずっと後のことだった。

かく(4)手錠をかけられて箱に閉じ込められる。このような「脱出マジック」をハリー・フーディーニーが思いついたのは、精神病院に行って、閉鎖病棟で拘束されている患者を見たときだったという。そのような起源を知らないままに、エンタティンメントは私たちを楽しませる。

かく(5)『ウルトラQ』や『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』などの初期のウルトラシリーズを企画し、脚本を書いた金城哲夫さんは、沖縄戦を経験して いた。敗戦という経験がなかったら、日本からウルトラマンは生まれなかった。子どもたちはそれを知らずに楽しむそれでいい。

かく(6)アインシュタインは、. "Creativity is knowing how to hide your sources" (創造性とは、その起源を隠すことである)という言葉を残した。その起源を知らずに楽しめるような作品。それが、最高の創造物である。

かく(7)「魔術」には二種類ある。自分の欲望を満たしたり、相手を貶めるための「黒魔術」と、美しいものや愛を成就させるための「白魔術」。これらの二つの魔術が、目的は違っていても「方法」は同じなのかどうか、古来論争があったというのである。

かく(8)たとえ、その起源に悲しみや苦しみ、怒りといった「起源」があったとしても、それを復讐の「黒魔術」とするのではなく、愛や美しさをこの世にもたらすために用いる「白魔術」とすること。これが、創造性の本質である。白魔術を享受する人は起源を知る必要がない。

かく(9)この世には、歴史の起源から巧みに隠されている秘密がある。輝くような笑顔、美しい薔薇の花。私たちの周囲に、白魔術として存在しているものの背後には、おそらくは起源としての黒魔術がある。そして、私たちは必ずしもそのことを知る必要はない。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。