2011年10月5日水曜日

「魔法使いはもういない。ありがとう、スティーヴ・ジョブズ」の連続ツイート

まあ(1)iPhone5は出なかった。朝起きて、すぐにウェブを見たら、「iPhone4S」「失望で株価下落」という文字。マイナーチェンジのみだったというのは残念だが、コーヒーを飲んでいたら、もっと別の大きな変化が起きていることに気付いた。

まあ(2)スティーヴ・ジョブズがいない。健康問題から、ついにアップルのCEOを退任した、スティーヴ・ジョブズがいない。もちろん、後任のティム・ クックも優秀な人だろうし、これから頑張るだろうと思うけれども、スティーヴ・ジョブズがいないという喪失感を埋めることはできなかった。

まあ(3)スティーヴの基調講演は、「現実がその周囲だけ変化」するのだった。「one more thing!」と言って、ステージに戻ってくるその瞬間を、クリスマス・プレゼントを待つ子どものようにわくわくしながら待った。あの時間は、もう戻って 来ない。時代は過ぎた。

まあ(4)映画配信を発表した時、一枚目のスライドでは、聞いたことのないマイナーな会社ばかり並んで、「しょうがないな」とがっかりさせた。「ところ で、この会社も参加するんだけどね」と見せた二枚目に、すべてのメジャーな会社。満場の拍手。スティーヴはそういう人だった。

まあ(5)「one more thing」。ここに、人々をびっくりさせようというスティーヴのいたずら心があったのだろう。確かに、アップルの発表を世間は固唾を呑んで待った。他の どんなプレス・イベントよりも、期待度が高い。それはすべて、スティーヴのおかげだった。

まあ(6)一度、幕張でスティーヴ・ジョブズの基調講演を生で聞いたことがある。ステージに出てくる前から、まるでロックスターを待つような期待感と雰囲 気。出てきた瞬間に、会場の温度が明らかに上がる。熱狂と興奮が頂点に達する。そんなスティーヴは、もう舞台にはいない。

まあ(7)今や伝説となったスタンフォード大学卒業式でのスティーヴのスピーチ。「愚かであれ、ハングリーであれ」。自身は大学を中退し、自宅裏のガレージでマッキントッシュを組み立てるところからアップルを創業したジョブズ。その情熱の強度が、今見ても胸に迫る。

まあ(8)子どもの頃、親がまるで魔法使いのように見える瞬間がある。お父さんだったら、たいていのことができちゃうんじゃないかな。プレゼント、何くれるんだろう。どこに連れていってくれるんだろう。そんな魔法使いの残像を、ぼくたちはスティーヴ・ジョブズに見ていた。

まあ(9)スティーヴ・ジョブズだったら、あっと驚く新商品で世間を驚かせてくれるに違いない。「1984」が「1984」でない理由だけでなく、 「2011」が「2011」でない理由も教えてくれるに違いない。そんな夢の時間は終わった。魔法使いは、もう舞台の上にいない。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。