2011年10月20日木曜日

「この情報は本当かな、と批判的に考えることが、脳の機能を高度化する」ことについての連続ツイート

この(1)ニュージーランドの心理学者、ジェームズ・フリンが発見した「フリン効果」というものがある。先進工業諸国の人々の平均知能指数が、上昇し続けているという現象。生活条件の改善など、いろいろな要因があると考えられるが、大きな要素は「メディア」の変化だろう。

この(2)新聞、ラジオ、テレビ、インターネット、携帯電話。新しいメディアが登場する度に、人々はより多くの情報に接し、それを高速で処理するように なってきた。その結果、脳の機能が高度化しているものと考えられる。知能指数(IQ)は環境要因によって影響を受けるのである。

この(3)私たちは、今ごく普通に街中でスマートフォンを使ってメールをチェックしたり、地図で検索したり、文字を打ったりしているが、これはたとえば 50年前の人たちから見れば驚異であろう。時代とともに進化するメディアを、空気のように吸っているだけで、脳は「賢く」なっている。

この(4)フリン効果は、「ムーアの法則」と同様、今後も続くかもしれない。その際に鍵になることの一つが「批判的思考」(critical thinking)であろう。情報を鵜呑みにしない。本当にそうなのかと、裏をとる。さまざまな情報源に接して、最後は自分で判断する。

この(5)マスメディアは、人々から思考能力を奪い、情報を鵜呑みにさせるというかたちで発展してきた。古典的な事例は、オーソン・ウェルズがラジオで 「火星人襲来」のドラマを流し、人々が本気にしてパニックになった事件だろう。このようなマスメディアの悪弊は、時代が変わっても続いている。

この(6)テレビをたまに見ていると、特に民放は、「沈黙」や「空白」を嫌うメディアになっていることに気付く。よく言えば情報のかけ流しだが、悪く言え ば、視聴者に、受け身でだらだら見て、ものを考えない態度を植え付ける。「一億総白痴化」と大宅壮一が断じたころと変わらぬ。

この(7)一方、ネットは、多種多様な情報源に自分で能動的に接し、認識し、判断するという点において、マスメディアとは異なる態度を醸成する。よく、 ネットの情報は信頼できないというが、そんなことは当たり前で、マスメディアの情報だって鵜呑みにしてはいけないことでは 変わりがない。

この(8)ネットが情報流通の中心になるにつれて、脳はより総合的で批判的な思考をするように促される。ここに、「フリン効果」の次のステージが現れる。 ネットの玉石混淆の情報に接して、自らの論理と感性で選別することは、自分の脳の機能を高度化する絶好のチャンスなのだ。

この(9)ネット上でも、一部の情報を鵜呑みにして拡散したり、論を立てたりしている人を見かけるが、従来のマスメディアに対する接し方のモデルを、その ままネットに当てはめてしまっているのだろう。私たちはもっと能動的で、選別的になって良い。変化はそのうちマスメディアにも 必ず波及する。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。