2011年10月10日月曜日

「結ぶべき点と点は後からしかわからないのだから、とにかく好奇心に従っていろいろやってみるのが良い」ことについての連続ツイート

てと(1)スティーヴ・ジョブズ氏の、今や伝説となったスタンフォード大学卒業式のスピーチにおいて、ジョブズ氏は創造性の秘密について、重大なことを言われている。すなわち、「点と点を結ぶこと」(connecting the dots)について。

てと(2)ジョブズ氏は、養父母が豊かではなかったがために、学費の高かった大学を中退した。そのあともふらふらして、授業をいくつか取っていた。そのうちの一つに、「カリグラフィー」(西洋で、書道に当たるもの。ただし、ペンを使う)があった。

てと(3)文字を美しく書くことが、コンピュータの開発と結びつくとは、普通は思わない。しかし、ジョブズ氏がカリグラフィーを履修したことが、後に、 マッキントッシュにおいて、さまざまな美しいフォントを整備したり、文字の間のスペースを調整できたりといった特長へとつながっていった。

てと(5)「ハングリーであれ、愚かであれ」(Stay hungry stay foolish)という言葉で結ばれたスタンフォード大学スピーチ。「愚かであれ」は、結ばれるべき「点」と「点」は、後でしかわからないのだから、好奇 心に従ってさまざまなことを経験しよう、ということ。

てと(6)普通、一人のひとが経験しないような「点」と「点」を持っている人が、常識では思いつかない「創造性」を発揮できる。そのためには、好奇心にあ ふれていて、おっちょこちょいで、やたらと動き回る、そんな人になるしかない。世界の中に散らばっている「点」の間を疾走するのだ。

てと(7)「点」と「点」を結びつけることは、別の言い方をすれば、「過去」を育てること。自分がかつて経験したことの中には、今の自分に役に立つ原石、道具がきっとある。だから、時々人生を振り返って、過去に栄養を与え、育てていくことが創造性へとつながっていく。

てと(8)私に関して言えば、小さなことだけど、講演などの時、子どもの頃祖父や父に連れられて寄席に通った経験がとても役に立っている。落語家の方の間の取り方や、漫才師の方の場の掴み方とか。役に立つなんて、思ってなかった。気付いたのは、ずっとあとのことだった。

てと(9)教育が、即戦力だとか、社会への適応など、短絡的な効用で語られがちな昨今、ジョブズ氏の「点と点を結ぶ」は大切なメッセージ。何の役に立つか わからないからこそ、教育は意味がある。すぐに役立つ教育は、創造性から遠い。結びつけるべき「点」と「点」がそこにはないから。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。