2012年4月4日水曜日

立ち止まるためのこだわりから、進むためのこだわりへ

たす(1)先日、4月2日に放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、久しぶりに番組に参加させていただいた。@nhk_proffのスタッフの、相変わらずの濃密な仕事ぶりに感銘を受けた。番組のテーマは、「プロのこだわり」。番組の準備をしている中で、あることに気づいた。

たす(2)「こだわり」というと、世間では、なんとはなしに「頑固」だとか「融通が利かない」というような意味でとらえられることが多い。たとえば、「がんこ親父がかたくなに自分のやり方を守る」というような。しかし、『プロフェッショナル』が焦点を当てた「こだわり」は、少し違っていた。

たす(3)たとえば、すでにおいしいパンができているのに、さらにあるはずだ、もっとあるはずだと工夫を重ねる。レシピを、誰でも、どんな状況でも実行できるものへと「ヴァージョン・アップ」させていく。現状に満足せず、さらに先を目指す動機付けとしての「こだわり」があるのである。

たす(4)テレビのグルメ番組などで、「開店以来同じやりかたを貫いている」と紹介されるような時の「こだわり」は、いわば立ち止まり、踏みしめて、変わらないための「こだわり」である。それはそれで価値があることかもしれないが、進むための「こだわり」は、より現代的で、普遍的だ。

たす(5)今のやり方でも、よい成果が上がっている。周囲からも評価され、自分なりの充実感もある。それでも、「これではまだダメだ」という「根拠のない不満足」を持って、さらによいものを追求すること。そのような休むことのない魂のよりどころとしての「こだわり」が、番組では描かれた。

たす(6)スティーヴ・ジョブズは、たくさんのボタンがついていたスマートフォンの現状に満足しなかった。ボタンは一つ。そして、立ち上がるアプリに応じて、柔軟にボタンが配置されるような、そんな新しいかたちがあるはずだという「こだわり」が、iPhoneに結実した。

たす(7)メディアのありかた、大学のあり方、働きかた。生き方。日本の社会の中で、本当は変えた方がいいはずのものはたくさんあるはずだ。今までのやり方に固執する「こだわり」ではなく、よりよいやり方をあくまでも模索する「こだわり」を、みんながもっと持った方がよい。

たす(8)ジョブズさんもそうだったが、現状に満足しない、進むための「こだわり」を持つ人は、必ず現状と摩擦を起こす。それでも、安易に妥協せずに、自分のヴィジョンを信じて突き進むこと。現代社会に求められている「こだわり」は、そのようなダイナミックで熱き心だろう。

たす(9)進むための「こだわり」を持つためには、まずは自分のヴィジョンと、現実との「差分」に敏感であること。日本はそれなりに豊かな国になったが、まだまだ満足してはダメだ。「根拠のない不満足」を持ち続けて、突き進もう。「こだわり」を、立ち止まるためのいいわけにしてはいけない。