2012年5月23日水曜日

笑いの文化は、いろいろだよね

わい(1)大塚国際美術館の取材のために、徳島に来ている。昨日、初めて『リンカーン』という番組を見た。以前、『プロフェッショナル 仕事の流儀』が火 曜日放送だった頃は、「裏番組」として認識していた番組である。そしたら、着ぐるみの人たちがいろいろな競技をしていた。

わい(2)「ビーチフラッグ」とか何とか言って、着ぐるみの人たちがうつぶせに倒れて、それからでこぼこの砂地を走ってフラッグを取りに行く。その様子がおかしくて、ボコッ・バシッなどという効果音も面白く、なんだかソファーの上で笑ってしまった。

わい(3)話は飛ぶが、イギリスに留学していた時のこと。ケンブリッジからヒースロー空港に行くのに、最初は電車から地下鉄を乗り継いでいたが、タクシー を予約すると2時間くらいで、そんなに高くなく行けることがわかった。それからは、Missleton Court5番の自宅に来てもらった。

わい(4)ケンブリッジからヒースローまでの道は、M25に当たるまでは田舎でのんびりしている。ある時のこと、タクシーの運転手さんといろいろ話していて、コメディーの話題になった。私はイギリスのコメディが大好きだから、そのことを話すと、大いに盛り上がった。

わい(5)モンティ・パイソンとか、フォルティ・タワーズとか、私の好きなコメディの話をしていると、運転手さんが、「そういえば、私が今まで見た中で一 番面白かったコメディは、日本のやつだった」と言い出した。「もう、面白くておもしろくて、腹を抱えてわらったよ。止まらなかった。」

わい(6)「へえ〜どんなやつですか?」と聞くと、「なんだか、若いやつが、裸で、泥の中を走ったり、何かにぶつかったり、よけたり、熱いお湯に入ってあ ちちちち、とか出てくるやつだった」というから、ああ、それは、ビートたけしさんが若手芸人とやっていたような番組だな、と思った。

わい(7)笑いの文化は多様である。イギリスのコメディは、政治や社会のネタが多く、しかも差別や偏見の問題など、「一番やばいところ」につっこんで行 く。日本では、「スネークマン・ショウ」の桑原茂一さんがパイオニア。ブリティッシュな笑いは、ちょっとブラックなテーストがある。

わい(8)一方、日本の笑いの強いところは、身体を張ったフィジカルな笑いだろう。「風雲たけし城」が未だにヨーロッパやアメリカで放送されて人気を博し ているように、身体を張って、いろいろなことに耐える、という様子から笑いを引き出すのが、日本の笑いの文化の一つの金脈である。

わい(9)「へ〜、そうなんだ、ああいう笑いが好きなんだ」。私は、ケンブリッジからヒースローに向かうタクシーの中で、運転手さんにそう言った。笑いの 文化はいろいろで、国や地域、時代によって異なる。私は日本の笑いの文化の中で育ったけれども、イギリスの笑いの文法も知ってよかったと思う。