2012年5月27日日曜日

答えではなく、プロセスを教えるのが真の教育

こぷ(1)朝起きてすぐに、iPadでSurely You're Joking, Mr. Feynmanを読み始めたら、面白くて時間が経つのを忘れてしまった。ブラジルで教えていたとき、学生たちが暗記ばっかりしていて科学的思考法を身につけていない、というエピソードのあたり。

こぷ(2)ファインマンが、ブラジルの学生たちに質問をするように促す。すると、学生たちが、「そんなことをしたら、授業の時間がムダになる!」と抗議する。ところが、暗記している内容が、目の前の現実とどのようにかかわるのか、一向に考えようとしない。

こぷ(3)クラスに二人、よくできる学生がいた。「だから、ブラジルの教育システムでも、育つ人は育つ」とファインマン。ところが、後で、二人ともブラジル以外で教育を受けたことが判明する。「100%例外なくダメ、というのはある意味凄いシステムだ!」とファイン万は驚く。

こぷ(4)これが笑い話だとは思えないのは、日本も似たようなものだからである。ある時、私は大学の授業で原書を紹介したら、次の週まで読んできた女の子がいた。驚いて、「君、どこの高校?」って聞いたら、スイスの寄宿舎学校を出た人だった。日本の教育では、一週間で原書を読む力はつかない。

こぷ(5)東大法学部に学士入学したときのこと。大教室で、数百人の学生を前に、教授が90分間、延々と話している。講演会などでマネをすると、大受けする。「この手形小切手法のですね。。。手形の裏書き行為。。。判例は、こうなっておりまして」学生たちが、カイコのようにひたすら筆記する。

こぷ(6)その東大法学部を出た、私の友人、「天才バカ弁」こと、宮野勉はハーバード・ロー・スクールに留学したが、日本人はみな驚くのだという。教授が学生と対話をしていて、「そういう考えもある」「これもある」時間が来ると「じゃあ、来週」。えっ、答えを教えてくれないの?!

こぷ(7)大教室で、教授がマイクを使ってずっとしゃべっていて、それを学生が筆記して、試験に臨む。日本の大学でおなじみのあの光景は、ファインマンが批判していた、ブラジルの暗記授業と本質的に変わらない。結局、日本の大学教育は、安上がりのマスプロ。本物の知性が育ちようがない。

こぷ(8)現代の多くの問題は、一つの答えなどない。答えに向かう、プロセスだけがある。そのプロセスを、ロジックを持って丹念に共有できるかどうか。民主主義の基本的な能力を、日本人は訓練されていない。文科省が進めてきた学力観は時代遅れ。根本的に変えなければならない理由がここにある。

こぷ(9)先日千葉大で講義したときも、一冊でも原書を読んだことがある人がせいぜい5%くらいで、寂しかったな。スイスの寄宿舎学校を出ると、授業でさっと紹介した本を次の週まで読んできちゃうような機動力ができる。これじゃあ、日本の教育システムから外れようという人が出てきても当然だ。