2012年1月9日月曜日

テレビの未来

てみ(1)機会があって、昔のテレビ番組(『クイズタイムショック』、『ぴったしカン・カン』)を見ていたら、本当に懐かしく、あの頃はテレビが面白かったし、好きだったんだなあと改めて思った。司会の久米宏さんや、田宮二郎さんが輝いている。もう、神話の世界である。

てみ(2)テレビが、テロップを多用したり、SEやキャプションを詰め込む傾向になったのは、編集技術の進化や、いつチャンネルを変えられるかわからない という視聴環境の影響もあるのだろうけれども、改めて昔のテレビを見ると、のんびりと落ち着いていて、そのリズムがかえって心地よい。

てみ(3)もう一つ重大な違いがある。それは、一般視聴者(素人)の参加が目立つこと。クイズ・タイムショックの回答者は一般の人たちが中心だし、ぴったしカン・カンは、萩本欽一さんと坂上二郎さんが、それぞれ芸能人と一般人のチームを率いるというフォーマットだった。

てみ(4)いわゆる「素人参加番組」がほとんど見られなくなったというのが、最近の日本のテレビの顕著な特徴である。アメリカやヨーロッパでは、むしろ一 般の人が参加するreality tvが中心なのに、日本ではほとんどない。結果として、画面の中はタレントの人の順列組み合わせになる。

てみ(5)制作者の話を聞くと、素人参加番組が減った理由は、権利処理などの難しさにも一因があるのだという。タレントだと、事務所もあるし、さまざまな 処理が簡単なのだという。結果として、テレビが「身内」のものになってしまっている。タレントどうしの内輪トークがその典型だろう。

てみ(6)テレビを見ているのは一般の人たちなのに、そこに一般の人たちが出ないのは、どう考えてもおかしい。制作者側も、いろいろ難しさはあるのだろう けれど、一般視聴者も参加できる番組を、もっと作っていくのがいいのではないか。フォーマットの可能性はまだまだあるはずだ。

てみ(7)ネットの登場によって、テレビの地位低下が指摘されている。一方で、ツイッターのトレンドワードの多くがテレビ由来であることを見ても、未だ影 響力は続いている。先日の『ラピュタ』の際の「バルス!」祭りを見ても、皆で同時に見るというテレビの強みは、決してなくなっていない。

てみ(8)サッカーの日本代表戦などは、生で見ないと意味がないし、ニコニコ生放送でも、映画の放映を増やしていくという。みなで一緒に見て、「弾幕」で盛り上がるという新しい「テレビ」の体験が出現する。YouTubeも、独自の番組を製作し始めると聞く。

てみ(9)今の日本の地上波テレビは、確かに独特の「雰囲気」(タレントの内輪空間)が支配しているが、歴史的に見ればそれがすべてではなく、未来におい てもそれが続くとは限らない。テレビが重要なメディアであることはおそらく変わらないから、少しでも面白い番組が登場することを期待したい。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。