2012年1月12日木曜日

誰にだって劣等感はあるわな

だれ(1)そもそも人間というものは、最大の欠点の近くに最大の長所があるもの。私で言えば、落ち着きがないという欠点があるからこそ、すぐにぱっと切り 替えていろいろなことができるという長所もある。ところが、人間は、自分の欠点(だと思い込んでいるもの)に劣等感をいだきがちである。

だれ(2)驚くのは、誰が見てもきれいなモデルさんが、自分の顔の特徴の一部を気に入らない、恥ずかしいと思っていたりする。他人から見ればうらやましい 人でも、劣等感を抱く。デカルトは、良識は万人に与えられていると書いたが、劣等感は、万人に平等に与えられているというのが世の真実。

だれ(3)誰がどうみても大成功を収めた天才的な役者さんが、「私は学歴がないので」と謙遜したりする。一方で、いい大学を出ても、「あの大学を出てこの程度か」と思われることが劣等感になったりする。学歴は、持っていても、持っていなくても、劣等感の元になりうる。

だれ(4)普通の家に生まれた人は、家柄がいい人を、「さすがだ、かなわない」と思ったりする。一方で、代々続く家柄に生まれついた人は、何をしても七光 りと思われるのではないかと考えてしまう。本当は自分の才覚でも、「あの人は何代目だから」と思われるのではないかと感じてしまう。

だれ(5)美人を見ると、「ああ、きれいでいいな」と劣等感を抱く。ところが、美人は美人で、「私の中身を見てくれない。私の外見だけが目当てで近づいてくるんだ」と考えてしまう。お金持ちはうらやましいが、逆にお金持ちは、「金が目当てなんじゃないか」と考えてしまう。

だれ(6)つまり、劣等感というものは、何かを持っていたとしても、あるいは持っていなかったとしても生じてしまうものである。だからこそ、万人に平等に 与えられている。だとすれば、そういうものだと諦めて、開き直ってしまうのが一番良い。劣等感は、むしろ、個性の認識である。

だれ(7)劣等感のやっかいなところは、それを意識し過ぎるとコミュニケーションがうまく行かないところ。しかし、抑圧しようとすればするほどダメになる。だから、思い切って認めて、カミングアウトしてしまうのがいい。ユーモアで語れれば、もっと素晴らしい。

だれ(8)コミュニケーションは、対称的なときにうまく行く。誰だって劣等感を持っているんだから、お互い人間だ、そういうことくらいあらあね、とおおら かに認め合うことで、腹を割って話し合うことができる。だからこそ、「持っている」人にも劣等感があることを認識することが大切。

だれ(9)日本人は、欧米に対してずっと劣等感を持ってきた。だからコミュニケーションが非対称になってうまく行かない。あっちだって同じくらい劣等感を 持っているんだ、と気づいたときにトモダチになれる。人間、どんな文化の人だって、そんなに変わりはしないわな。だって、人間だもの。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。