2012年1月14日土曜日

創造することだけが、生きることだよ

そい(1)朝日カルチャーが終わって、飲み会があって、解散になったとき、誰かがきたからそっちに行こうと思ったら、ガードレールですってんころりんした。植田工が見ていて、「茂木さん敏捷!」とか言ってたけど、そういう問題じゃなくてすりむいて血も出るんだよ!

そい(2)怪我をすることもあれば、心の交通事故もある。先日はイヤなことがあって、突然2時間歩いたな。生きていればいろいろある。それでも仕事は来るし、移動もしなければならない。今日は、釧路に行くわけなんだけれどもね。ツルさん、待っていてください。

そい(3)昨日、大林宣彦監督の『この空の花』の初号試写会で、となりに伊勢正三さんがいてびっくりした。本当に楽曲を尊敬している。それで、アサカルの 時に『22才の別れ』をみんなで聞いた。いい曲だよね。 芸術って、みんなを本当に深いところで癒すためにあるんじゃないかな。

そい(4)人間が意識を持って、いつかは死ぬということも認識してしまって、そしたら辛いから、この世界にないもの(「芸術」)を創った。それだけではな い。一般に、「創造」することの中には、生きることを根底から癒す側面がある。だからこそ、大林監督だって映画を作り続けるわけだし。

そい(5)日本人が元気がないのはね、新しいことに挑戦していないからじゃないかな、と思う。チャレンジ精神を失ったとかそういうことじゃなくて、事実において挑戦を続けていない。だから、閉塞しちゃうんだよね。朝から晩まで、新しいことに向き合っていけばいいのにね。

そい(6)ぼくは、40歳になったとき、突然フルマラソンに出た。2010年に48歳になったとき、これからの12年間は、生まれてから小学校卒業までみたいな感じで生きてやろう、と思った。ああいうのは、バネなんだろうね。生命の危機が来たときに、生きるためのバネ。

そい(7)20歳くらいのときに、悲しいことがあったとき、『トリスタンとイゾルデ』ばかり聴いていたわけだけど、深いところで癒されるんだよね。本物の 芸術には、人を根底から救うことがある。それも、現実から逃避するんじゃなくて、むしろリアリティそのものの中に突っ込んでいくんだ。

そい(8)子どもだまし、なんて言うけどね、子どもは本当はこの世のありさまをよく知っているんじゃないかな。何しろ生きているということが驚異だと言うことを良くわかっているし。この世界に生まれたびっくりの記憶が新しいわけだから、死だって本当は近しい。

そい(9)すってんころりんで怪我をした翌日、創造することだけが生きることだと改めて思うわけです。こんな朝早くから、睡眠不足の頭を抱えて、釧路に飛 ぶために羽田に向かっている。すってんころりんしようがしなかろうが、仕事は向こうからやってくるよ。逃げるわけにはいかない。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。