2012年1月20日金曜日

オレが言うまでもなく、抵抗してもムダだよ

おて(1)このところ、日本の現状がガラパゴスであることを殊更言う気分にならないのは、私がいうまでもなくもう大競争が始まっている、という思いが強いからかもしれない。人は、面白く、未来につながる方に惹き付けられるに決まっている。それが生存本能なのだから。

おて(2)AppleがiBooks 2を発表した。教科書が再発明される。電子教科書への移行は、時代の必然である。紙の手触りが大切だとか、書き込みができないとか、「イデオロギー」で反対する人たちがいるが、議論をするまでもなく、電子化していくに決まっている。

おて(3)文部科学省の「教科書検定」については従来いろいろなことが言われてきたが、電子教科書化によって、そもそも意味がなくなる。リンクが張られた先のネットの情報を「検定」するわけにもいかない。すでに、私立学校の多くはそもそも文科省検定の教科書を使っていない。

おて(4)日本では、一部の作家の方々の間に電子書籍に対する抵抗感が強い。「自炊」代行業者を訴える動きもその表れである。しかし、時代の流れを見れば、むしろ問題とされるのは日本の電子出版の遅れの方だろう。へんなことを自分でしなくても、ちゃんと供給されていればそっちを使う。

おて(5)東京大学が秋入学への移行をほぼ決めた。歓迎すべき動きだが、すでに高等教育機関の国際大競争においては、遅れをとっている。まだ、受験生の大多数は日本の大学入試の文脈に適応しようとするのだろうが、目端の利く奴は外を見るに決まっている。そっちの方が面白いんだから。

おて(6)書籍にせよ、大学にせよ、まだ需要がありますよ、やっていけますよという議論と、時代のエッジを切り開く面白い動きがどこにあるかという問題は全く別である。大学にせよ、書籍にせよ、面白さの坩堝は日本のエスタブリッシュメントの中にない。そんなことは、わかるやつはわかっている。

おて(7)だからね、新卒一括採用だとか、大学入試だとか、書籍だとか、ぼくが殊更言挙げしたり、指摘したりするまでもなく、もう勝負はついているんだよ。だったら、その面白い世界で自分がどう活躍できるか、そっちの方に資源を投入した方が楽しいに決まっているよね。

おて(8)そんなこともあって、ぼくは「ガラパゴス化」ということを殊更言わなくなった。ぼくが言わなくても、勝手に変わっていくと思うから。それでさ、若いやつらさ、日本の面白くない「エスタブリッシュメント」のメンバーになろうときゅうきゅうするよりも、本当に面白い方に行っちゃわないか?

おて(9)日本に生まれ育ち、日本を愛するオレとしては、この国の現状は非常に悲しいけど、世界の動きを見ればtoo little too lateだよね。動こうとせず、ああだこうだ言って抵抗するエスタブリッシュメントの方々は放っておいて、自分たちで勝手に坩堝の中に飛び込みませんか。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。