2012年1月1日日曜日

ある日突然、思い立つ

あお(1)年が明けて2012年になった。年が改まるというのは人為的な約束だが、それでも気持ちが引き締まり、新たな思いや希望がわいてくる。正月の本質はコミュニティ。周囲の人もシンクロしてそのような感慨を抱くことで、共感の質が高まっていく。

あお(2)人生には、カレンダー上の節目があると同時に、ある日突然やってくるきっかけもある。その時に、人生は改まる。気づき、出会い、断念。その突然の節目を大切にして、逃さないようにしなければならない。

あお(3)忘れもしない、去年の正月。私は突然2時間40分歩いた。年末に多忙でちょっと体調を崩して、これではいけないと思ったのだろう。自分でも不思議だったが、あの日から、自分の中で確実に何かが変わった。今でも、長距離歩くということを続けている。

あお(4)小学校5年生のある日、私は、突然、「絵画教室に行きたい!」と言い出した。その週から行って、大学生の頃まで油絵の教室に通っていた。最初に描いたのは、「アジの開き」だった。あの日の突然の思いつきは何だったのだろう?

あお(5)そして、私の人生の最大の転機と言えば、31歳の春に電車に乗っていて、突然「ガタンゴトン」という音の生々しい質感に気づいて、「クオリア」に目覚めたことである。物理主義の限界を悟った。その後の人生の方向を決定付ける、もっとも本質的な転機だった。

あお(6)暦の上での画期は普通に生きていれば向こうからやってくる。しかし、自分の内面での画期は、心に耳を澄ませていないと気づかないことも多い。年 代が改まる、大きな変化は、いつどこでやってくるかわからない。そして、思い立ったら、その勢いに乗って、自分が変わるところまで行ってしまえ!

あお(7)気づきのうちもっとも貴重なものは、その瞬間から何か新しいことを始める、というものであろう。自分の行動のあり方が変わる。新たな挑戦を始め る。そこには緊張と不安がある。自分がそんなことをするとは思っていなかった行動する時間に、事も無げに飛び込んでいく。そんな年にしたい。

あお(8)というのも、人間には、前からやろうやろうと思ってやっていなかったり、あるいは自分には無理だと思っていたり、縁がないと考えていることが沢山あるからである。その「壁」をいかに乗りこえていくか。自分の邪魔をしているのは、結局は自分自身なのだ。

あお(9)ある日、突然思い立つ。新しい年の始まりは、本当はそこにある。その瞬間はいつやってくるかわからない。カレンダー上の新年は、みんながその気 持ちになるから共感の輪が広がるが、自分だけの新年は、孤独の中にやってくる。自分や他人の中の、季節外れの新年の気配に耳を澄ませていこう。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。