2011年12月31日土曜日

世の中は変わらない

よか(1)この一年を振り返って思うことは、「世の中は簡単には変わらない」ということである。しかし、感激があり、ヴィジョンがある。人生というのは結局は中途半端なまま進んでいくしかない。その中で信じられるのは、手元でやっている作業だけである。

よか(2)3月11日、忘れることなどできない大震災が起こった。そのあと、東北の人たちを襲った大変な事態を、私たちは決して忘れることなどできない。何度も被災地に通った。でも、何もできなどしなかった。ただ、耳を傾けて、声を聞くことしかできなかった。

よか(3)あれだけのことがあったから、今度こそ日本は変わるだろう、変わるべきだと多くの人が思ったろう。しかし、変わりなどしていない。政治も、メ ディアも、そして何よりも大切なことだが我々自身も、相変わらずの日常を過ごしてしまっている。そこに、考えてみるべき出発点がある。

よか(4)人間は一つの生態系である。そして、生態系は強固なものである。大量絶滅の時代でもない限り、種の交代のスピードは遅々としている。恐竜からほ乳類への転換が、そう簡単に起きるはずもない。それでも、私たちの頭脳は、ついつい先をあせってしまう。

よか(5)自分自身だってそうだ。理想としている、活動や存在のあり方がある。それと現実とのギャップがある。毎日朝起きてから、夜寝るまで一生懸命生き ているように思ってはいるけれども、それでも対して変わりはしない。自分が変われないことを振り返れば、世間が変わらないのは当たり前だと思う。

よか(6)ただ、痕跡はある。被災地を訪ねて、大変な経験をした人たちが、それでも前向きに生きている姿に接したとき、この感激を忘れまい、絶対に覚えて おこう思った、その瞬間の自分だけは 残っている。一日にしては変われないとしても、毎日その方向にうんうんと少しずつ押していく。

よか(7)今年のある時期、私はツイッターのプロフィール欄に「社会の前に自分を革命せよ」と書き加えたが、自分が変わることの難しさを引き受けていなけ れば、単なる小言幸兵衛になると思ったからだ。そして、自分が本当に変わることの難しさを日々感じながら、それでもうんうんいっている。

よか(8)日本の社会のあり方について、システム的、論理的に考察して、変化への方向性を論じることはもちろん貴い。それと、本当に存在がに変わるという ことは別。私たちの精神は、常に肉体を先取りしてしまう。だから焦るが、空虚な言葉遊びで満足してはならない。身体がともなわなければ!

よか(9)世の中は変わらない。そう簡単には変わらない。だからこそ、「あの山に登ろう」「あの山を目指せ」と言っているだけでなくて、実際に毎日登山を しよう。うんうんいいながら、一歩一歩に自分の重さを感じながら。世の中は変わらない。しかし、だからこそ、いつか絶対に変えてみせる。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。