2011年12月28日水曜日

原本にこだわる役所のやり方そのものが時代にそぐわない

げや(1)朝6時55分に目が覚めた。たまたまテレビをつけたら、NHKの7時のニュースで、暗い中、誰かがどなっていて、車が停まっている。そうしたら、車から、段ボールを次々と運び出す人たちがいる。一体何をやっているんだろう? 一瞬、意味がわからなかった。

げや(2)聞いていてわかった。昨日、市民団体の抗議によって沖縄県庁に搬入できなかった普天間基地の辺野古への移設の環境影響評価の評価書(アセスメン ト)を、午前4時過ぎに県庁内の守衛室に運び込んだのだという。そこを見つかってしまって、抗議している男性がいたのだ。

げや(3)県庁側としては、開庁時間以外は受け付けないから、午前4時過ぎに守衛室に「搬入」しただけでは「受理」とは言えず、今後、午前8時30分の開 庁時間以降に「受理」するのかしないのか、判断を迫られることになるのだという。随分姑息なことをするものだと思ったが、別の違和感があった。

げや(4)喉が痛いから、レムシップ(イギリスで風邪の時に飲む、レモン風味の薬)でも飲もうとお湯をわかしながら思った。ああ、わかった。私が違和感を 覚えているのは、評価書を、ああやってハードコピーで持ち込む役所の体質そのものだ。そんなもん、pdfで送ればいいじゃないか。

げや(5)役所としては、紙に印刷した「ハードコピー」じゃないと正式な提出、受理としては認めない、ということなのかもしれないが、そのあたりが、この 問題に関する役所の旧態依然たる体質を象徴しているように感じられる。電子データをウェブ上で公開して、もって提出とするとなぜできないのか。

げや(6)評価書(アセスメント)は、多くの人が関心を持つ重大事である。思わぬ評価の漏れやバイアスがあるかもしれない。関心が高い書類なのだから、ウェブ上で直ちに公開して、みなでその内容について検討するというのが、現代における民主主義の当然のあり方だろう。

げや(7)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価準備書」(平成21年4月)については、ネット上にその全文が公開されている(http://bit.ly/tYxt0X )。今回の評価書も、本当の「提出先」は沖縄県民、日本国民であるはずで、ネットで直ちに公開すべきである。

げや(8)抗議運動に阻まれて提出できなかったらと言って、午前4時に県庁に搬入する。それ以前に、この時代に「ハードコピー」にこだわる。そのあたりに、ネットで情報が迅速に公開されるべき現代にそぐわない、役所の体質が見えてしまっている。

げや(9)評価書の実質的な意味を考えて、議論のために有効にそれを使うというのではなく、手続きを(たとえそのやり方が姑息であっても)形式的に満たし ていればいいとする。そんな役所の前時代的な感性が、7時のニュースの冒頭の映像で、世間に告知されてしまった。残念なことである。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。