2011年12月19日月曜日

本人に自覚のない変人が、面白い

ほお(1)田森佳秀(@Poyo_F )の話は、いつも面白い。実話なのだが、何度聞いても笑ってしまう。それで、本人は、「面白くないよ」というが、やっぱり面白いと思う。「私は変人」という人が変人ではないように、「私は面白い」という人は面白くないのだろう。

ほお(2)田森が、子どもの頃北海道豊頃町商工会の福引きの準備をさせられた話。ある年は一等商品が鮭のつかみ取り。「佳秀、鮭は一度に何匹つかめるもの か、やってみろ」と言われた。まず殴って気絶させる。そのあと、両脇に二匹ずつ、股に二匹、最後にアゴの下に一匹「つかめる」ことがわかった。

ほお(2)別の年は、一等商品が100円玉のつかみ取りだった。「佳秀、100円玉というのは一度に何枚つかめるものか、やってみろ。」まず、指の間に 100円玉をつめて、グローブのようにする。それからすくうと掴めることがわかった。ただし、あまり掴みすぎると手がふくれて穴から出なくなる。

ほお(4)田森の育った豊頃町では、毎年仮想行列をやっていた。ある年、田森はシンデレラをやった。長い棒の上にシンデレラの張りぼてをつくった、自信 作。ところが、あまりにも重くて、張りぼてを持ったまま歩いていると、腕が死ぬほど疲れる。時々道の上に置いて休んだが、地獄の時間だった。

ほお(5)田森が落とし穴を掘った「山本鶴」さんの話は最高傑作の一つ。近所の悪ガキを落とそうと、練りに練った落とし穴をつくった。穴のふちを少し下げ て、そこに新聞紙を敷いて、上から土をかけ、そこに草を植えて水をまき、数日おいて、周囲とまったく区別がつかない素晴らしい落とし穴。

ほお(6)ところが、悪ガキを呼ぼうとしたら、町役場の山本鶴さんがやってきてしまった。「あーっ」と思う間もなく、鶴さんが落ちていく。「時間がスロー モーションで流れていくんだよ」。ずどどどどーん。不思議なことに、山本鶴さんは何ごともなかったように立ち上がり、歩いていきましたとさ。

ほお(7)田森佳秀には、変人の自覚がない。ある時薔薇の折り紙に凝ってたから、山手線の中で、「田森さ、あれって何回くらい折るんだ?」と聞いたら黙っ ている。窓の外の風景を見ているのかな、と思っていたら、二駅過ぎたところでぽつりと「84回。ただし、そのうちの2回は折り目をつけるため」。

ほお(8)今でも、その時のことを持ち出すと、「誰だって頭の中で数えるよ」という。「そんなことはないだろう、お前は普通じゃない」というと、田森は 「だって、数えるしか答える方法はないじゃないか」と田森はいう。こういう、変人の自覚がない変人こそが、本当の変人なのだろう。

ほお(9)結論。田森佳秀(@Poyo_F)の言動が面白いのは、本人が身体を張っていろいろ工夫しているからである。薔薇の折り紙にしろ、落とし穴にしろ、鮭のつかみ取りにせよ、工夫を積み重ねていく、その詰め方が尋常ではない。だから、面白い。変人の自覚がない変人が、この世で一番面白い。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。