2011年9月15日木曜日

「やらかしてしまうことの価値」についての連続ツイート

やか(1)水戸第一高校の生徒の前で話した。水戸市内の会場が震災で使えないので、小山だという。始まる前、リュックの中にくしゃくしゃに丸められたシャツとジャケットに着替えようと、トイレにいった。「トイレに隠れている」とツイートした。

うか(2)ちょっと一服するか、とiPhoneで将棋ソフトをやっていたら、どたばたどたばたと廊下をすごい足音がする。あれっ、と思ったら、トイレの外がざわざわする。「おれ、どきどきするわ」とか、「握手してもらうか」とか、そういう声もする。思わず銀をへんなところにおいてしまった。

やか(3)水戸第一高校のやつらに違いない、ということまではわかった。新撰組に捜索されている、坂本龍馬のような気持ちになった。気配で、「この個室にいるな」と見当をつけたのもなんとなくわかった。仕方がない。観念をして、水を流すふりをして、さりげなく出た。口笛は吹かなかったけれど。

やか(4)出たら、案の定いたよ。元気のいいのが4人。みんな、てかてか笑っている。「あれ、水戸第一って、制服じゃないのか?」「ええ、私服なんで」「じゃあ、なんでお前は着ているんだ?」「いやあ、面倒くさいんで。」「ああ、そうか。」

やか(5)しばらく、そいつらとしゃべった。「おい、副校長あの部屋にいるから、気付かないようにしろよ。」みんなで写メを撮った。握手した。「お前ら、どこ受けるんだ? ああ、そうか!」三年生だった。元気いっぱいである。

やか(6)「いやあ、客席で、先生のツイート読んで、こりゃあいくしかないって、走り出して、それであっちのトイレにはいなかったから、こっちかな、と思って。」一番元気のいいやつがてかてか笑いながら話している。おれは、お前らはとてもイイネ! と思った。

やか(7)副校長先生には、「お待たせしました」みたいな感じで、涼しい顔を見せる。会場に行く。わーっと生徒たちが座っている。さっき来たやつらは、ばらばらだ。ということは、わーっと駆けて、連れだってきたんだな。ますます偉い。心が熱くなった。

やか(8)やらかすことの価値がある。言葉だけでなく、実際に自分の身体を動かして、身体を張って、何かをする。そういうことができるやつは、伸びる。いや、そうしないと、絶対に伸びない。オレのツイートを読んで、ばっと駆けだしたあいつらは、きっとこれから伸びるさ。

やか(9)批評とか評論とかしているやつらの共通点は、自分では何もしないことである。自分でやってみれば、難しさがわかる。水戸第一高校のあいつらは、批評・評論の対極にあった。新撰組に追いかけられてかくれている坂本龍馬の気持ちを味わえて良かったよ。ありがとうまた会おう。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。