2012年3月2日金曜日

抵抗したってどうせそうなるんだから、ムダだよ

てむ(1)角川グループが、kindleから電子書籍を出すことにしたのだという。素晴らしいニュースであり、歓迎する。もっとも、このニュースに複雑な思いをもって聞いた日本の出版関係者も多いだろう。そこで、今朝は電子書籍について考えてみたい。

てむ(2)「紙の本」に対するノスタルジアは意味がないことを確認しておきたい。本の流通形態の「一つ」として紙の本が存続することに、誰も反対はしない。しかし、そのことは電子書籍がオプションとして存在することを否定するものではない。紙かデジタルかではなく、紙もデジタルもなのである。

てむ(3)日本の書籍流通が、アマゾンやグーグル、アップルなどの外資のプラットフォームに支配されたり、大きなマージンをとられることを懸念するのは理解できる。しかし、情報ネットワークの構築こそ、日本が過去何年にもわたって怠けてきた分野であり、今さら文句を言っても遅きに失する。

てむ(4)時代の変化の方向は明らかなのに、ちまちました文句を言って何もしない。日本の文明の劣化は、ここに象徴されている。電子書籍の流通を迅速に実現できない技術的、企業的、法的怠慢こそ、日本の大学を始めとする教育システムの欠陥の結果。外資に文句を言うどころか、自ら反省すべき。

てむ(5)必要とされているのは、未来はどうなるべきかというヴィジョンだろう。梅田望夫さんに聞いた印象的な話。梅田さんが、ある時メンターと話していたら、ソフトが届いた。梅田さんの目の前で、そのメンターは箱をナイフで切り刻んで、包装をばらばらにし、フロッピーを取り出した。

てむ(6)そして、「本質的なのはこの中のデータだけなのに、何で無駄なことをしているんだ!」と叫んだという。ソフトをネットで買うなんて誰も考えなかった時代に、そのメンターは本質を見抜いていた。イノベーションを起こすエネルギーは、「義憤」であることを示すエピソードである。

てむ(7)誰がどう考えたって、数千冊の本を電子的に持ち歩くことができる時代が来た方がいいに決まっている。そうすれば、出版しにくかった全集も出せるだろうし、新刊の流通コストも減る。そっちの方がいいんだたら、世界はそうなるに決まっているのである。

てむ(8)もちろん、変化には困難が伴う。そのような困難を、ちまちまと指摘するのが得意な人もいる。しかし、どうせ抵抗したってムダである。みんなにとってそうなるのがいいんだったら、やがてそうなるに決まっているのだから。抵抗した分恥をかくし、余計なエネルギーを使うだけだ。

てむ(9)電子書籍に関する動きの遅さは、日本の文明の劣化の象徴だろう。電子書籍化はマンガなどのヴィジュアル業界にとっては大きなビジネス・チャンスでもある。ちまちました抵抗勢力に眩惑されて、人類の大きな変化という対局を見損じてはいけない。日本ではちまちました人たちの声が大きすぎる。