2012年3月4日日曜日

音楽がかかっていてもかかっていなくても、集中していれば関係ないよ

おし(1)勉強をするときに、音楽をかけるのはどうなのか、という質問を時々いただく。この問題について、半ば脳のはたらきの立場から、半ば経験から答えてみよう。私自身は、何か仕事をするときに音楽をかけることは時々ある。現に今も、youtubeで音楽をかけながらこのツイートをしている。

おし(2)音楽は、今やっている作業に直接関係はしていない。つまり、シグナルではなくノイズである。そして、脳の集中する力を高めるためには、ノイズがある環境でも、勉強や仕事ができるようにした方がいいことは確かである。前頭葉の機能とは、選択であり、排除だからだ。

おし(3)静かな勉強部屋でないと集中できない、というのはおかしい。人々が談笑している喫茶店でも、テレビがかかっていて家族がいる居間でも、集中できる人は集中できる。何かの調査で、東大生は居間で勉強している人が多いという結果が出ていると読んだことがある。

おし(4)私の畏友の田森佳秀(@Poyo_F)などを見ていると、本当に集中できる人は環境を選ばないのだなと思う。だから、音楽がかかっていようと人々が談笑していようと、自分のやっている仕事や勉強に集中できるくらいでないと、本当に前頭葉の集中の機能が高いとは言えない。

おし(5)以上は、音楽を主に作業とは関係のない「ノイズ」という視点から考察したが、逆に、作業効率を上げるはたらきはないのだろうか。いくつかの可能性がある。一つはリズムと引き込み。音楽がリズムをつくることで、作業があるダイナミクスに引き込まれて、効率が上がる可能性がある。

おし(6)もう一つは、音楽の気分向上効果。モーツァルトの音楽がIQを上げる効果があるという研究報告があったが、後に、自分の好きな音楽ならロックでもレゲエでも何でも良いのではないかと言われている。音楽が情動系に働きかけることによって、脳の全体の活性度が向上する。

おし(7)勉強が苦手である、という子どもが、音楽を聴くことによって「やりたくない」という気分が変わって、勉強に向き合うことができる、という効果は期待できる。逆に言うと、勉強する時にいつも音楽を聴いているというのは勉強が苦手な子にしばしば見られる現象で、音楽依存症はあまりよくない。

おし(8)勉強そのものが面白ければ、音楽をかけている必要はない。音楽がないと勉強ができないというのは、対象自体に興味を持っていない証拠。本当に勉強に興味がある人は、音楽がかかっているかどうかというのは本来どうでもいいこと。音楽というノイズがあってもかまわないという程度のこと。

おし(9)一般論に戻る。脳についての問いの多くがそうであるように、「○○が脳にいいか」という問題設定自体が間違っていることが多い。(http://bit.ly/d79oLp)音楽をかけても、かけなくても、別にどちらでもいい。本当の集中は、環境を選ばないのである。