2012年3月19日月曜日

江ノ島のエスカーから、ダイヤモンドおじさんへの黄金のリレー

えだ(1)江ノ島には、子どもの頃から行っているが、「あれ」には最初びっくりしたねえ。「エスカー乗り場」って書いてあるから、おっ、これはいいね、とチケットを買う。すると、エスカレーターがあるから、これで乗り場に上がっていくのかな、と乗るとすいすい上がっていく。


えだ(2)最初のエスカレーターがあると、またエスカレーターがある。ううむ。「エスカー」乗り場までは、ずいぶんあるんだなと思ってエスカレーターにまた乗る。すると、またエスカレーターがある。このあたりで、まてよ少しおかしいぞと考え始める。


えだ(3)ひょっとして、「エスカー乗り場」の「エスカー」って、「エスカレーター」のことだったのか、という気づきと、「まさかそんなことが」という疑いがせめぎ合い始めるが、4つめのエスカレーターが現れる頃には、「やっぱりそうだったのだ!」と疑いが確信に変わっていく。


えだ(4)結論としては、「エスカー」はまさかの有料エスカレーターであるわけだが、確かに階段を上っていくよりもすいすいとラクで楽しい。4連目には、チョコレートとかのお菓子の絵が描いてあって、魔法の国にいくような雰囲気もある。大いに大満足、江ノ島エスカー。文化遺産認定です!


えだ(5)エスカーを乗り継いで江ノ島の上に出ると、なぜか目がぱちぱちするような気持ちになる。ここに、かつて、とても魅惑的なトラップが待ち構えていた。アタマをポマードでてかてかにしたおじさんがいて、「さあ、こっち、さあ、こっち」と手招きするのである。


えだ(6)別に「こっち」に行く義理はないのだけど、つい行ってみると、ひしゃくを渡して、壺の中の砂をすくってみろという。その通りにすると、トレーの中に砂を開けて、おじさんがさささと調べている。「おお、ありましたっ!」と大げさに驚くおじさん。カランカランカランと鐘を鳴らす。


えだ(7)おじさんが見つけたのは、小さなダイヤモンドのかけら。「おめでとうございます。これは差し上げます」というからなんと太っ腹。しかし、「当選した人は、さらに、お得なねだんでダイヤモンドの指輪が買えるのです!」とおじさんはにこにこして言うのだった。


えだ(8)ぼくは外れたのに、妹は「当たって」、ダイヤモンドの指輪が欲しいという。母親は冷静に「やめておきなさい」と言うが、妹は聞かない。ダイヤモンドおじさんは、今考えれば、実に見事な商売をしていた。エスカーを乗り継いで気分が高揚しているところに待ち構えているんだから、たまらない。


えだ(9)壺の中の砂をしゃくって射幸心をあおり、からんからんと当選の鐘を鳴らして指輪を売るというのは、見事な流れだったと思う。いつの間にか、ダイヤモンドおじさんは消えてしまったが、江ノ島のエスカーに乗ると、今でも上がったところにおじさんが手招きしているような気がする。