2011年11月14日月曜日

人生において一番大切なことは、ピュアな気持ちを保ち続けること

じぴ(1)ワシントンDCを歩きながら、昨日読み終わったSteve Jobsの伝記をあれこれと思いだしていた。やはりぼくにとって一番感動的だったところは、Think DifferentのCMを思い出すと、今でも号泣してしまうと告白する箇所かもしれない。

じぴ(2)Think Differentのコマーシャルが出たとき、ぼくはものすごく感動して、当時はyoutubeなんかなかったから、ネットで検索して動画を探し出して繰 り返しみていた。有楽町のマリオンに大きな広告が出た時も、出かけていってアインシュタインやピカソの写真を撮った。

じぴ(3)ちょうどその頃、研究所に来ていたアメリカ人と話していた。彼がしきりに、Think Differentというのは文法的に間違っている、Think Differentlyだろう、とぶつぶつ言っていたのを思い出す。それを聞いて、そんなことを気にするか、と思った。

じぴ(4)Think Differentが文法的に正しいかどうかは、wikipediaの項目でも議論されていて、誰でもオヤ、と思うところだが、あのコマーシャルを見てま ずそのような反応をする人を、ぼくは基本的に信用しない。そのアメリカ人のことを、ぼくは内心陳腐なやつだと思った。

じぴ(5)生きていると、いろいろと細かいことがたまってくる。ヘタな知識が増えて、処世術も学び、事情通になって、したり顔であれこれと言うようにな る。Think Differentって、文法的にアレらしいぜ。そんな人たちは、Steve Jobsがなぜ号泣するのか、理由を知らない。

じぴ(6)とても純粋で、エネルギーに満ちていて、ストレートなメッセージを持っている芸術、作品。そのようなものに接した時に、素直に感動せずに、あれ これと些事ばかりゴシップする人たちがいる。そのような人たちと接すると、基本的に世界が違うのだと私はとっとと通り過ぎる。

じぴ(7)私の友人の選び方は、結局、どれくらい純粋なものに殉じて生きているか、ということかもしれない。生きているうちに智恵がついたり複雑になった りするのは当たり前で、そんなことをしたり顔に言われても仕方がない。年齢を重ねる毎に、むしろピュアになっていく人に惹き付けられる。

じぴ(8)たとえば新卒一括採用にしても、人事にこんなメリットがあるとか、君は世間を知らないとか、したり顔で言う人をぼくは全く信用しない。そんな不当な差別は維持不可能だという原則に純粋に寄り添うことを知らない人は、人類の未来の文明と無関係なのだろう。

じぴ(9)そういえば、ジョブズの伝記のひどい書評をどこかで読んだけど、すでに知っていることだとか、皮肉のスタンスでどうでもいいことを書き散らす暇があったら、Think DifferentのCMを見て号泣する、その純粋さをこそ持つべきなのではないだろうか。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。