2011年11月30日水曜日

本音にその人の無意識が表れるんだから、教養を身につけて耕さなくては人生もったいない

ほき(1)「オフレコ」発言というのは、その人の本音が表れるのだろう。特に、酒の席でのことは、その人がふだん抑圧しているけれども、無意識の中で考えていることが出やすい。だからこそ、おたがいの人間性を知るために、私たちは酒席をともにすることをたのしみにする。

ほき(2)昨日報道された田中聡沖縄防衛局長の酒の席での「発言」も、本音、無意識の思考の構造が出たものと思われる。あまりにも陳腐でお粗末。更迭されるのは当然だとしても、公務員のトップがこの程度の無意識しか耕せていないという事実に、愕然とする。

ほき(3)本音や無意識は、その人がどれくらい豊かな精神生活を送ってきたか、何を経験して、何を見て、考え、行動してきたかということによって耕され る。酒の席での本音は、いわばその人の人生の通知表。その発言が愚劣なものだったら、教養不足な人生と断じられても仕方がない。

ほき(4)ぼくは沖縄に行くと必ず斎場御獄に行く。世界遺産に登録されたかけがえのない聖地。最初に訪れたとき、何も人工的な設いを施さず、自然の織りなす岩と緑の景観が人間の精神に深い感化をもたらすことに衝撃を受けた。一番奥の三庫理からは、久高島が遙拝できる。

ほき(5)この斎場御獄の中に、小さな丸い池がある。沖縄戦の際に、アメリカ軍の砲弾を受けてできたくぼみに水がたまったのだという。戦争の傷跡さえ、そのままやわらかく受け入れてしまうような聖なる抱擁が、斎場御獄にはある。その前に立つと、沖縄の歴史に思いを馳せる。

ほき(6)斎場御獄は一つの例だが、沖縄に赴任する以上、その歴史や文化を学ぶということは公務員としてのいわば職務上の義務であろう。もし、その義務を 果たしていたら、今回のような愚劣な発言はあり得なかった。まことに失礼な言い方になるが、決定的な教養不足だと断ぜざるを得ない。

ほき(7)もし、酒の席での本音の発言が、「いや、私も、沖縄の人たちの思いや、苦しみもわかっています。しかしね、国というものは、時に難しい選択をす る必要がある時もある。そこをね、話し合ってね、お互いの理解を深めていきたい」というものだったら、どんなにか良かったろう。

ほき(8)防衛省だけの問題ではない。霞ヶ関に入ると、それぞれの「村」の雰囲気にどっぷりつかる。世界のさまざまな事象について、教養を深める機会を失 う。だから、つまらない人間が出来上がる。つまらないだけでない。大切なことに対する共感能力が欠ける。トップとしての資質がない。

ほき(9)振り返ってみると、ぼくが尊敬し、大切にする人たちは、みな無意識が美しい人だな。酒を飲んで出る本音が美しい。酒を飲んで出る本音が愚劣でつまらない人は、ああ自分は教養や経験が足りない、共感の振れ幅が 狭いんだと、大いに反省すべきだと思うよ。

※ ここに掲載している内容は茂木健一郎さん(@kenichiromogi)のTwitterからの転載です。